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日本の大学を変えると息巻いていた2010年頃が懐かしい。結局、大学は変わらない、高等教育を変えなければ、そのためは、まず、いま、高等教育という世界で私たちは何をしているのかを掴まなくてはならない、と関西学院大学に移った。大学には高等教育という世界があるものであって、そこに住まう住人はもれなく「この世界」に関心があるのかと思っていた。
大人のことは置いておこう。いわゆる悪しき受験の過程で植え付けられた受け身の姿勢やマインドを大学で一新してやろうというモチーフが、私た
ちにもあった。主体性が重んじられ、探究という言葉も普及する中で、妙な感覚に襲われた。
「考えてもいいですか」「これってこうですよね!」
高校で探究型学習が普及するに「つれて」増えてきた、学生のコメントである。もちろん、前者には「いいよ」と応え、後者には「いいね」と応えるようにしている。考えることに許諾がいるのか、考える「こと」の良し悪しがあるのか、といった疑問が沸く。考えようと必死にもがく、考えられていることを必死に自慢する、学生の姿に戸惑うことが多くなった。
世代間ギャップなのか、大学という組織がサービス産業化しているからなのか、いろいろと考える。いや、悩む。考えろ考えろ―そして、調べろ調べろ、確認しろ確認しろ―という現状の中で、私たちはなかなか考えることができていないのではないか。
教育に関わる人たちなら、多少なり、この感覚を共有してもらえるのではないかと思い、今回の企画を構想した。もちろん、これまで全力で取り組んできた、ハンズオン・ラーニング・プログラム(HoLP)の真価を世に問いたいという思いもあった。誰からみても「わかる」仕組みで、考えるという世界に向き合ってほしいというプログラムだ。
個々の参加者に何が起こったのかはわからない。このエッセイ集にそれらが吐露されているとも思わないし、それを言語化できるとも思わない。ましてや、何らかのわかりやすい成果が見えることによって、プログラムの品質保証をしたいとは思わない。
授業ではないので課題の成否を気にする必要はない。考えている状況に触れ、考えていた自分を記録してみる。何かを体験した人は、何かを書き残したいのではないか。そうした思いで、エッセイを「課した」。
このエッセイ集は、会場に集った私たちの思考の記録である。
エッセイ集(OND大森) 「なぜ、ONDなのか」より
PROGRAM
DEVELOPER

KENKO代表
木本 浩一
関西学院大学
ハンズオン・ラーニングセンター教授
自分を信じてみないか。どのくらい成長したか、どのくらいできるのか、誰かに測ってもらって安心したい、確信したいと思うことがあるのはわかる。しかし、それは、もっと先のことだ。
ハンズオンとは「触れる」ということだ。自分に「触れて」みないか。たった一日だ。自分が考えていること、言いたいこと、聞いたことに「触れて」みてほしい。